人事デューデリジェンス(人事DD)

人事デューデリジェンスでは、組織、人材など事業運営に欠かせない人に焦点を当てた調査を行います。M&Aの成否は、最終的に事業を行う人に掛かっており、統合後の人材の管理やモチベーション維持などを考えた調査が求められます。

人事DDは、財政面においては、給与や福利厚生、退職給付の適切性なども含めた総合的な報酬を調査し、現在の人件費が企業の財務にどのような影響を与えているのかを把握する必要があります。人事方針や人事制度、組織の状態や組織文化まで調査を行う必要があります。

一般的に企業買収による最大のリスクは、従業員のモチベーションの低下や、離職により、当初期待されていた業績を達成できなくなることだと言われています。

役員、従業員の中で、事業運営上のキーパーソンの経歴や能力を把握し、キーパーソン本人だけではなく、周囲の人のインタビュー結果も踏まえて、総合的に判断する必要があります。

また、就業規則や就業条件の違いを明確にし、買収後に人事制度などを統合する場合の影響などを把握する必要があります。

労働組合の有無、組合が存在する場合の加入率、労使交渉の経緯、労働組合の性質と経営への影響などを把握し、労働協約や労使間協定の有無なども確認します。

労働事故の発生状況や、補償状況を確認します。

人事DDにおいて、データによる定量的な調査は、人員数、報酬水準、退職金、人件費の推移などを行いますが、ヒアリングによる定性的な調査では、人事マネジメントの考え方、人事制度の仕組み、人事制度の運用実態、組織風土などのをチェックします。

人事の統合で起きやすい問題としては、統合された組織において、2つの組織の価値観、体制を融合するのに時間を要し、シナジーが十分に生まれないことです。現状分析において、新会社の方向性や価値観などを定めて、モチベーションの低下を回避する施策を講じる必要があります。

人事DDの事前準備

人事DDを行う事前準備として、大事なことは、M&Aを行う目的を理解し、どういうポイントで人事DDを行うかを押さえる必要があります。例えば、その会社の技術力が必要で買収を行う場合は、技術を支えるエンジニアのスキルチェックなどが重要となります。そして、事業統合を行なった場合の事業・組織・人材マネジメントの統合モデルなどを事前に精査する必要があります。その上で、課題を事前に抽出する作業を行います。

人事DDを実施する際のチェックポイント

人事DDを実施する際は、対象会社の組織、人員、人件費などを把握し、報酬制度、退職金給付制度、健康保険・福利厚生に関する制度を把握する必要があります。
経営者に対しては、買収後のポジションや役割、報酬などを提案し、継続勤務の意思を確認する必要があります。